BALL. HUB たちかわ

BALL. HUB たちかわ

オフィスリノベーション(東京都立川市 108m²/32.67坪)

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BALL. HUB たちかわ

「キテン」が生まれる交流拠点  木と手仕事でつくる “働く場所” のリノベーション

けやき出版は立川で創業して41年の出版社。本の編集だけでなく、多角的な視点で“街を編集する”会社として多摩地域に関する情報発信を多岐にわたり行っています。

地域の人と交流し多摩の魅力を発信するための拠点づくり

今回紹介する「BALL.HUBたちかわ」は立川市魅力発信拠点施設「コトリンク」内に位置し、けやき出版は自社のオフィスかつ、多摩の情報発信・交流拠点としてその運営に携わっています。「『たまら・び』や『BALL.』といった地域情報誌をつくってきた経験のなかで、地域の人と交流し、発信をしていくには、ハードとしての拠点が必要と強く感じていました。そんな時、コトリンクの運営事業者のプロポーザルの話があり、ぜひやりたいと手を挙げました」と代表の小崎さん。

大テーブルは武蔵野美術大学の小泉ゼミで使用していたもの。机の裏面には歴代ゼミ生の寄せ書きがあり、歴史やストーリーを感じる。小上がりのようなスペースは自然と人が集うようなおおらかさがあり、人が集まるイベントでも重宝しているそう。
大テーブルは武蔵野美術大学の小泉ゼミで使用していたもの。机の裏面には歴代ゼミ生の寄せ書きがあり、歴史やストーリーを感じる。小上がりのようなスペースは自然と人が集うようなおおらかさがあり、人が集まるイベントでも重宝しているそう。
床はOAフロア、天井は現し、壁はボード下地を活かしたシンプルな空間の中に、真っ白な本棚と木の家具が映える。カウンター後ろ、本棚の一角の事務スペースへ続く扉はあえて低くし、来客時にスタッフがお辞儀をしながら出てくるようなかたちに。日本らしい「おもてなし」のデザインがおもしろい。
床はOAフロア、天井は現し、壁はボード下地を活かしたシンプルな空間の中に、真っ白な本棚と木の家具が映える。カウンター後ろ、本棚の一角の事務スペースへ続く扉はあえて低くし、来客時にスタッフがお辞儀をしながら出てくるようなかたちに。日本らしい「おもてなし」のデザインがおもしろい。
奥に配置された図書スペースは、多摩に関する本だけでなく、幅広いジャンルの本が収められている。一人用のデスク“机箱”では集中して読書を楽しめる。
奥に配置された図書スペースは、多摩に関する本だけでなく、幅広いジャンルの本が収められている。一人用のデスク“机箱”では集中して読書を楽しめる。
立川駅からデッキで繋がる立川市魅力発信拠点施設「コトリンク」の3階。全面ガラス張りで中の様子が伺えるので、気軽に立ち寄れる。
立川駅からデッキで繋がる立川市魅力発信拠点施設「コトリンク」の3階。全面ガラス張りで中の様子が伺えるので、気軽に立ち寄れる。

プロポーザルにあたり相談したのが、デザイナーの小泉誠さんと相羽建設。両者とも『たまら・び』や『BALL.』の取材がきっかけでお付き合いが始まり、昨年期間限定で百貨店のテナントでBALL.HUBを運営する際に空間デザインと施工を依頼。コトリンクのプロポーザルでも引き続き3者でタッグを組み、審査を経て、運営事業者として選定されました。
空間コンセプトは「inforest=情報の森」。中心をぐるりと回る本棚には無数の本、それを囲む木の家具は場所を選ばずふっと腰をかけ寛ぐことができる--ガラスの外の街の景色とは切り離されたゆったりとした時間が流れています。

大テーブルは”交流ワークスペース”。訪れた人が読書をしたり、編集スタッフがデスクとして利用したり…その時々によって表情をかえる。テーブル上には色校正用のライトを設置し、原稿を広げてチェック作業も。
大テーブルは”交流ワークスペース”。訪れた人が読書をしたり、編集スタッフがデスクとして利用したり…その時々によって表情をかえる。テーブル上には色校正用のライトを設置し、原稿を広げてチェック作業も。
エントランスカウンターもデスクの一つ。本棚に飾られた『たまら・び』(現在休刊・全103号)は多摩初の地域密着型情報誌として1997年に誕生。けやき出版の顔だ。
エントランスカウンターもデスクの一つ。本棚に飾られた『たまら・び』(現在休刊・全103号)は多摩初の地域密着型情報誌として1997年に誕生。けやき出版の顔だ。
唯一壁で仕切られたミーティングスペース。デスク上にはメッシュターポリンでできた軽やかな屋根が。“ひとつ屋根の下”、一体感のあるデスクで話もはずむ。
唯一壁で仕切られたミーティングスペース。デスク上にはメッシュターポリンでできた軽やかな屋根が。“ひとつ屋根の下”、一体感のあるデスクで話もはずむ。

「最初、ここは交流拠点だけのつもりだったんですよ」とスタッフの木村さん。しかしオフィスが別では十分なおもてなしが難しくなるという小泉さんの助言からオフィス機能も移転し、スタッフ全員で常駐することにしたそう。「フリーアドレスで仕事をすることや、日々訪れる方の応対など、環境もがらっと変わりましたが、やはり人の顔が見えるというのはいいですね。”場所も人も成長する”という小泉さんの言葉のように、訪れた人とスタッフの交流によって、共に成長していける場になればと思っています」(木村さん)

事務スペース。視線は遮りながら外の気配は感じられる落ち着いた空間。
事務スペース。視線は遮りながら外の気配は感じられる落ち着いた空間。
「コの字型の構成はイベントの時なども一箇所に人が密集せず、ポイントごとに人の交流が生まれるのでとてもいい距離感です」(小崎さん)
「コの字型の構成はイベントの時なども一箇所に人が密集せず、ポイントごとに人の交流が生まれるのでとてもいい距離感です」(小崎さん)

「キテン」が生まれる交流拠点とは

「BALL.HUBたちかわ」では“「キテン」が生まれる交流拠点”というコンセプトを掲げています。
この「キテン」とは、①何かを始めたい人のための「起点」、②現在の活動を発信していく「基点」、③革新的な事業を興していきたい人のための「機転」の3つの意味があります。
多摩で事業を始めたい、今している活動をどう伝えたらいいか?という相談から始まり、編集部や地域の人たちと交流しながら、発信の方法を考える(出版、イベント企画、ECサイトなど様々)、そのプラットフォームがこの「BALL.HUBたちかわ」です。

オフィスの一角の棚の上に様々な資料をご用意いただき、空間を見渡しながらの取材。オープンスペース、個室、立ちながら気軽に、座ってじっくり…と、多様で柔軟な接客スタイルが気兼ねなく相談できる空気感をつくりだしている。
オフィスの一角の棚の上に様々な資料をご用意いただき、空間を見渡しながらの取材。オープンスペース、個室、立ちながら気軽に、座ってじっくり…と、多様で柔軟な接客スタイルが気兼ねなく相談できる空気感をつくりだしている。
BALL.=たま(多摩)とシャレが効いたネーミング。各号テーマに合わせた多摩のヒト、モノ、コトを紹介。多摩地域の人にはぜひ一度手にとってもらいたい情報誌。
BALL.=たま(多摩)とシャレが効いたネーミング。各号テーマに合わせた多摩のヒト、モノ、コトを紹介。多摩地域の人にはぜひ一度手にとってもらいたい情報誌。
「本がつくりたくなる紙」の解説がワクワクする立川紙業のショーケース。
「本がつくりたくなる紙」の解説がワクワクする立川紙業のショーケース。

この拠点ができたことで、情報誌『BALL.』の発売記念として誌面に登場した事業者さんを招いてイベントを開催したり、東京R不動産さんと協働で立ち上げた新事業「キテン事業部」で、多摩の事業者とともに新たなビジネスモデルを探るディスカッションイベントを開催したりと、地域の方とリアルにつながり、双方向で交流・発信する機会を生み出しています。

編集部も常駐。編集作業を垣間見れるのもおもしろい。
編集部も常駐。編集作業を垣間見れるのもおもしろい。
企業の広報誌なども手がける。
企業の広報誌なども手がける。
自費出版の本棚も。
自費出版の本棚も。

「『キテン』と聞くと、自分にはあまり関係ないと思うかもしれませんが、実際は”ここは何をしている場所?”とふらっと訪れる方がほとんどです。本棚の地域情報誌やパンフレットは自由に閲覧することができますし、BALL.DEPARTMENT(多摩のモノ・コトを紹介、購入ができるECサイト)の商品に実際触れてもらったりと、どなたも気軽に楽しんでもらえたら」と木村さん。

「まちが好きになる本」の棚には多摩・30市町村それぞれのパンフレットなどがおさめられている。
「まちが好きになる本」の棚には多摩・30市町村それぞれのパンフレットなどがおさめられている。
BALL.DEPARTMENTの商品を展示。ここで実際商品に触れて、ECサイトで購入する仕組み。
BALL.DEPARTMENTの商品を展示。ここで実際商品に触れて、ECサイトで購入する仕組み。

運営側の一方的な情報発信ではなく、地域を巻き込んで新たな繋がりを生み出す交流拠点「BALL.HUBたちかわ」。これからどんなおもしろい「キテン」が生まれるのか、一緒に多摩地域を盛り上げる仲間として私たちもとても楽しみです。

空間デザイン:小泉誠+Koizumi Studio+こいずみ道具店
施工:相羽建設株式会社
竣工写真:Nacása & Partners Inc.
撮影・編集:相羽建設|伊藤夕歩・中村桃子・猪股恵利子